Tradition and Inovation

 二月の初旬、機会があって東京国立新美術館で開催されたルノワール展を観に行きました。あまりにも有名な印象派の画家の絵が85点展示されていました。一枚一枚に圧倒されながらも、しかし、有名だから全ての絵が気に入るとは限りませんでした。私が気に入ったものは、それほど多くはありませんでした。とても興味を引いたのは絵そのものもさることながら今回の展覧会のテーマでした。今回のルノワール展のテーマは「伝統と革新」(Tradition and Inovation)でした。ルノワールがどのように伝統を大切し、さらに革新を目指したか。それが素人にもわかるように展示されていました。
 三月一日、「宮谷理香と廻るショパンの旅」というタイトルのピアノ演奏会を妻と一緒に聴きに行きました。娘からちチケットを贈ってもらったからです。演奏会場は浜離宮朝日ホールでした。宮谷理香は、第13回ショパン国際ピアノコンクールで第五位に入賞した方で、パンフレットを見ますと、2001年から「宮谷理香と廻るショパンの旅」というタイトルで毎年一回演奏会を開催してきたもので、今年が10年目の演奏会でした。しかもショパン生誕200年目に当たる日でした。今回は「最終章〜生誕200年のその日に」というテーマとなっていました。パンフレットによれば、演奏家宮谷理香さんはこの10年間演奏にあたって毎年のプログラムで「変化と不変」というテーマを持って10回の演奏をしてきたそうです。音楽に関してこれも素人の私、10回すべてのプログラムと、この日のプログラムや演奏の中に「変化と不変」が表現されたのか全く理解はできません。そこを目指していたと言う本人の言葉を信じる以外にありません。しかし、ショパンの華麗な音と音楽は十分満喫し、充実した一夜であったことは確かです。
 ルノワール展の「伝統と革新」、宮谷理香の「不変と変化」、共に同じ思想に足を置いている点について、いつの時代でも、どのジャンルにおいても、大切な要素ではないかと思いました。日本の教会も常に変えてはならい「伝統」「不変」なものを大切しながら、それだけでなく、大胆に「革新」「変化」することを恐れず取り組むことの大切さを考えさせられました。福音書に見るイエス・キリストの生き方そのものが伝統と革新だったのではないか。伝統と革新と言う視点で福音書を読み直そうと思いました。